神経伝達物質と自律神経の関係とは?ニューロンやシナプスなど関連用語も紹介

神経伝達物質と自律神経の関係

脳内には、60種類以上の神経伝達物資があり気分や運動機能、内蔵の活動など幅広い機能を調整しています。

これらの神経伝達細胞が、シナプスによってニューロンに信号を送っています。

放出される神経伝達物質によって、自律神経系や感情、記憶や学習に様々な影響を及ぼします。

ニューロンとは

脳は、おもに神経細胞(ニューロン)と神経膠細胞(グリア細胞)という2種類の細胞で構成されています。

90%がグリア細胞が占めており、ニューロンは脳内全体の10%に過ぎません。

ただし、このニューロンが脳で情報を処理する主役と言われています。

ニューロンは、情報処理や興奮の伝達などの役割を担うことに特化した細胞なのです。

ニューロン同士が複雑に接合し、情報を伝えあうことで、脳内の情報ネットワークを形成しています。

一方、グリア細胞はニュローンの機能のサポートや栄養を与える役割を果たしています。

シナプスとは

ニューロン同士が結合するこで、脳は情報を伝達しています。

他のニューロンや組織に接合する隙間をシナプスと呼んでいます。

シナプスでは、神経伝達物質という化学物質によって情報が伝えられています。

送信側のシナプスが、神経伝達物質を受信側のシナプスに送ります

受信側のシナプスが神経伝達物質を受け取ると、その刺激が電気信号に変換されてニューロン内と伝わっていきます。

記憶や感情、感覚などにそれぞれ担当する神経伝達物質があります。

該当の神経伝達物資の分泌が活性化すると、シナプスの結合が強化されます。

例えば、記憶や学習にはドーパミンが深く関与しています。ドーパミンが適度に分泌されると、記憶力が高まります。

記憶力に関連するドーパミン

ドーパミンには。シナプス同士の結合を強化して、記憶・学習に関わる作用があります。

情動と結びついて記憶することで、行動が強化されます。

報酬に対して、強く反応するようになります。

金銭(報酬)を受け取れるといった刺激をドーパミンの放出が促進されます。

ドーパミンは脳に快感を与えるので、ドーパミンを得るために放出のきっかけになった行動を強化します。

記憶や勉強でも、「覚えた」や「出来た」という達成感を得るとドーパミンが放出され気持ちよくなります。

快感を覚えた脳は、きっかけとなった行動を強化するようになるので、良い循環が生まれます。

主な神経伝達物質と、その特徴

主な神経伝達物質の解説

ドーパミン

刺激への反応や報酬系に関与

カテコールアミンの一種で、ノルアドレナリン、アドレナリンの前駆物質。

ドーパミン作動性ニューロンは中脳の黒質、腹側被蓋野に多く存在し、記憶や学習、運動の調整や気分、報酬系などに関わっている。

カテコールアミンとは
アミノ酸のチロシンが変換して作られる神経伝達物質の総称です。チロシンは、カテコール基という化学構造をもつことが由来です。カテコールアミンの神経伝達物質は、気分や運動、自律神経系の調整に関わっています。

ノルアドレナリン

学習、記憶、痛みなど、さまざまな機能と感覚を活性化

チロシン→ドーパ→ドーパミンを経て合成されるカテロールアミンの一種で、ノルエピネフリンともいう。青班核に多く存在し、脳内に広く投射。

覚醒、不安、注意、学習などに関与する。

セロトニン

睡眠と覚醒のサイクルに関与

必須アミン酸の一種、トリプトファンから合成される。

セロトニン作動性ニューロンは、延髄の縫線核から広範囲に投射する。

情動や気分、睡眠などに関与する。

GABA(ギャバ)

アミノ酸の一種で、前駆物質はグルタミン酸。中枢神経系全域に広く分布し、抑制性シナプス伝達の媒介という重要な役割を担う。

情動や異聞、睡眠、覚醒などに幅広く関与している。

アセチルコリン

脊髄や脳幹などの運動ニューロンで産生される神経伝達物質で、シナプス後膜の受容体に結合すると、筋の収縮が起こる。

アセチルコリンの機能障害は、重症筋無力症などの運動障害につながることもある。

アドレナリン

チロシン→ドーパ→ドーパミン→ノルアドレナリンの変換を経て合成される。

カテコールアミンの最終型。エピネフリンともいう。脳以外では、副腎から血液へも放出され、自律神経系の調整に関与している。

ヒスタミン

ヒスタミン作動性ニューロンは、視床下部から脳内に広範囲に投射し、おもに感覚の伝達や炎症反応に関与している。

そのほかに、副腎皮質にも存在し、自律神経系の調整などに関わっている。

グルタミン酸

グルコースなどから合成されるアミノ酸の一種で、GABAの前駆物質。

中枢神経系全域に存在し、興奮性シナプス伝達を媒介する。過剰に放出されると神経の過活動により、痙攣などが起こる。

自律神経

自律神経は、内蔵などの器官を無意識のうちにコントロールして、生命を維持するために働いています。

人間は、特別に意識しなくても、心臓は絶え間なく鼓動しますし、消化器は食物が体内に入れば消化吸収します。これらは、すべて自律神経のコントロールによるものです。

自律神経は、つねに変化している体内外の環境に対応して、内臓機能を調整しています。

たとえば、気温が低下すると、抹消神経と収縮させて血液量を減らし、体温が下がるのを防いでいます。このように環境の変化に即応するシステムが自律神経系です。

自律神経系は、眼球、心臓、気管支、胃腸、膀胱、肝臓など、体内のあらゆるところに及び、全身の内蔵と血管をコントロールしています。

交感神経と副交感神経

自律神経系は、活性化する交感神経と抑制する副交感神経の2つの系統に分類されます。それぞれの役割は相反しています。

交感神経はアドレナリン作動性神経で、身体の活動を活発化させます。

副交感神経は、コリン作動性神経で、神経を休息させる役目を担当しています。

交感神経と副交感神経の反応例

恐怖や怒りを感じた場合の自律神経のはたらき

恐怖や怒りを感じると、交感神経のシナプスではノルアドレナリンを放出して体内を活性化します。

身体の変化としては、血圧や心拍数が上昇し、筋肉などの器官に大量の血液を送り出します。

恐怖や怒りが収まると、副交感神経がアセチルコリンを放出し体内活動を落ち着かせます。

アセチルコリンが、恐怖や怒りによって上昇していた、血圧や心拍数を抑制して元の状態に戻していきます。

ストレスを感じた場合の自律神経のはたらき

強いストレスを感じたときの、交感神経と副交感神経の反応例です。

ストレス下では、交感神経が優位になり、全身を闘争状態に導きます。ストレスから解放されると、副交感神経が優位になり、全身をリラックス状態にします。

ストレス状況下 交感神経 > 副交感神経
ノルアドレナリン、アドレナリン、ストレスホルモンなどの分泌量が増加
ストレスに対処ために全身が闘争状態になる

  • 心拍数増加、血圧上昇
  • 汗の分泌
  • 食欲低下(胃腸の運動抑制)
  • グリコーゲンの分解(使用するエネルギーの確保)
ストレス解消後 交感神経 < 副交感神経
アセチルコリンの分泌量が増加
全身をリラックス状態にする

  • 心拍数減少、血圧低下
  • 汗の減少
  • 食欲増進(胃腸の運動促進)
  • グリコーゲンの合成(エネルギーの貯蔵)

長い期間に渡ってストレスを受け続けると、身体に多大な悪影響を及ぼします。

  • 血圧の上昇が高血圧の原因になる
  • 血糖値の上昇が糖尿病の原因になる
  • その他、生殖機能の低下(勃起不全)、成長抑制、免疫機能の低下
  • 精神面では、うつ病や摂食障害、自律神経障害、PTSD(心的外傷後ストレス障害)

ストレスを感じると、脳に糖質ステロイドというホルモンが作用し、たんぱく質の分解を促進するなどしてエネルギー確保に動きます。

この作用は、ストレスと解決するのに短期的には有効です。しかし、長期間にわたりストレス状態が続くと心理状態と身体に悪影響が引き起こされます。

ストレスは、脳にも悪影響があります。とくに海馬への影響が大きく、強いストレスを感じ続けると、海馬の働きが弱まり容積が小さくなっていきます。

海馬の働きが弱まることで、記憶力と学習に認知の能力が低下してしまいます。

参考:「海馬のはたらきと記憶力向上との関係とは

参考:「記憶力を高めるサプリメントとは?

ですが、短時間で適度なストレスを与えれた場合には、パフォーマンスが上がるという側面もあります。適度な緊張状態によって、勉強やスポーツなどにポジティブな影響を与えます。

調子が悪いと感じている方で、ストレスによる悪影響を懸念しているなら早期の対策をおすすめします。やっかいなのは、体調不良の原因をストレスとするのが難しく、気づいたら取り返しのつかないことになっているケースが多いことです。

ストレスによる最悪のケースである、高血圧や糖尿病、うつ病やPTSDは症状が重くなるまで自覚症状が少ないのです。

参考:「ストレス対策はサプリが効果的!ストレスの心身と記憶力の悪影響とは?」

ホメオスタシス

交感神経による促進と副交感神経による抑制という相反する側面をもつ自律神経の本来の働きはホメオスタシス(恒常性)とされています。

ホメオスタシスとは、外部の環境が変わったときに、体内環境がそれに影響されて変化しないように均衡を保とうとする機能です。

たとえば、ストレスを感じると交感神経の作用により、心拍数と血圧が上昇します。そのままでだと、心臓機能がオーバーヒートしたり、血圧が異常値まで振り切れてしまいます。

ホメオスタシスによって、副交感神経が作用し平常値に戻るように体内ではたらきます。ですが、過剰になりすぎるとホメオスタシスの働きでは対応できずに病気になります。

体温調整

体温が36〜37度に維持できるように調整している。

外気の温度に左右されないように、寒いときには交感神経が皮膚の立毛筋と緊張させ熱の放出を防ぎ(鳥肌)、全身を震わせて熱を生み出そうとします(震え)。

暑いときには、発汗して熱を放出しています。

血圧調整

心拍数と心筋によって血圧を調整

交感神経が親近の拍動力を強めて心臓の鼓動と速め、血管を収縮させることで、血圧を上昇させて末梢組織に血液を送ります。

副交感神経は、心筋の力を弱めて心拍数を下げ、血圧を下げます。

水分調整

水分の摂取量と排泄量のバランスを調整

交感神経が作用すると、腎臓での塩分と水の排出が抑制されます。これによって体液が増え、血圧が上がります。

副交感神経が作用すると、水分の排出が促されます。

体内の水分量の変化は喉の渇きとして視床下部(体温調整や血糖調整などを司る生命維持に重要な脳の部位)に伝えられ、水分補給の行動を引き起こします。

血糖調整

血糖値の変化に応じて、満腹と空腹中枢を刺激

交感神経の作用で体内が活性化すると、全身の筋肉にエネルギーが必要になります。肝臓に貯蔵されたグリコーゲンが分解されて血中にブドウ糖が放出されます。ブドウ糖によって血糖値が上昇していきます。

副交感神経が作用すると、グリコーゲン分解が抑制されて血糖値は落ち着いていきます。

「神経伝達物質と自律神経の関係とは?ニューロンやシナプスなど関連用語も紹介」まとめ

神経伝達物質は、自律神経の働きを促すために欠かせません。人が、生きる上で重要な役割を果たしています。

自立神経のバランスが崩れることによって、体調不良や脳の機能が低下します。極端な環境の変化が長く続くと、ホメオスタシスでも対処できなくなってしまうのですね。

現代社会では、ストレスなどの外的要因を取り除くのは難しいです。ですが、適切な神経伝達物質が脳内で産生されるような栄養を補給したりしてケアすることはできます。

自律神経のバランスが崩れることで発症する病気は、初期症状に乏しく重度にならないと判然としない種類の病ばかりです。

すこしでも生活環境に不安があれば、原因を探してみて予防するようにするといいですね。